「LIONS GOOD NEWS
2023」を検索してみた。そこで、いかに私自身が、これまでの価値観、旧来型のバイアスに引きずられながら、古い思考から物事をとらえているかにハッとさせられた。つまり、このサイトでNPOを知る、各種コミュニケーションの事例を知る、はたまたインターネットで関連の調べ物をするにしても、それぞれの答えに行き着くにはある程度の段取りが必要で、その苦労を覚悟しなければならない。そのため、常にもっと合理的に、もっと効率的に、という指標がちらつき、いかに素早く答えに辿り着けるかが現在では重要になっている。しかし、このショートカットを良しとする行動へのアンチテーゼとなるのが、このサイトで体験できる「じゃない方検索」ではなかろうか。少し遠回りしながらも、敢えて想定内の着地点をズラし、そのセレンディピティ的な情報の出会いをもたらすことで、ある種の発見を促してくれる体験はこれまでの指標の転換を予感させる。正解を探し求めながらも、ふと周辺を散策するような、そんな遊びを排除する潮流が、せっかくの知的好奇心溢れる機会でもあるネットサーフィンをつまらないものにし、そこから生まれる創造性を阻害してきたのだと思う。そしてそれは、しばらくの間、ちまたで繰り返し言われてきたイノベーションを生み出すきっかけを潰してしまっていたのかもしれない。
2007年頃から現在に至るまで、いわゆるGAFA時代はアルゴリズムの最適化による極端なショートカットが正義とされ、一方でフィルターバブルによる知識のたこつぼ化という弊害が知らず知らず発生していたように思う。しかし、ChatGPTの出現でこれらの様相は一変するだろう。最適解へのショートカット、超合理的解決のための「AといえばB」といった定型の浸透が、人々の想像力を衰えさせたのは間違いない。正解へ効率的に導くその方程式を、友人のアーティストは「因果」という言葉で指摘した。原因と結果というワンセットが、その強固な関係性を世の中に「常識」という形で突きつけ、無理強いしている。そのような既成概念の元となる常識、あるいは悪しき慣習を、このChatGPTを活用した「じゃない方検索」は見事に壊して見せてくれる。実際に操作してみると、そこで検索した言葉とは異なる回答が想像していた単なる反対語を超えており、その斜め上からの目線には良い意味で期待を裏切られる。さらによくよく見れば、その検索結果が確かに「じゃない方」に適合するよね、と時間をおいて気づかされることも。数回、その操作を繰り返し、その都度、異なる結果が続いたとき、これはいま流行の量子力学的に相通ずるところがあるなと感じた。あれも正解、これも正解、元の答えはひとつのはずなのに姿形を変え同時に複数の場所に存在するという矛盾が成立してしまっているからだ。まさに「因果」という、ある意味わかりやすい関係性が終焉を迎える時代となったのかも知れない。ひとつだけの正解を探していた時代から、人それぞれの答えが違う時代、いわば支配者のいない、すべての人たちの独立性が担保される「新しい民主主義の始まり」を感じさせるというと言い過ぎだろうか。100人100通りの答え、100の真実、100の考え方があり、それぞれ全員正しく、またどの答えも受容され尊重されるべき時代なのだと思う。それは我々Forbesが提示する「インクルーシブ・キャピタリズム」の世界にも通ずるものと言えよう。
もうひとつの見方として、ChatGPTはアーティスト的思考、あるいは分散的視点を与えてくれるツールでもある。先のも述べたが、通常の人間のイマジネーションは、自分の経験などそれまでに積み重ねてきた知識のリニア、直線上にあるものに留まる。その通常の想像力を超えるのがクリエーターやアーティストの能力であり、おいそれとそれを身につけることは叶わない。但し、これまでの当たり前の積み重ねの先に解はないと気づいた一部のビジネスリーダーは、この思考をなんとか手に入れようとアートに傾注し、その一端でも掴もうと努力している。アーティストの思考は、地平に居ては見えない時空で紡ぎ出され、その閃きはまさに未来を掴むような感覚に近いのだと思う。しかしChatGPTはこの感覚を恐らくすべての人に提供してくれるはずで、これにより様々な領域での進化が加速していくこととなろう。先の友人の言葉を借りれば、「因果」から「縁起」、すなわち物事の進化の通常フローに何かしらの見えない力が加わり、まったく別のものが生まれるという偶発性が高まる気がする。そしてそれは既存の社会的ルールや正答とされていた合理性を破壊し、カオス化へ導くこととなる。これまで何事も地道にビルドアップしていくというプロセスを踏んできた我々が、アートの秘める破壊と創造といった世界を体験することができるのがこのChatGPTによって拓かれる世界なのだと思う。
「じゃない方」は反目する世界を顕在化して見せるものではないだろう。今まで言語性に囚われすぎてしまっていた我々の意識を転換し、新たな思考への脱却を手伝ってくれるものなのだ。言葉が持つある種の古さ、例えばイノベーションということさえ、いまは古く感じてしまうのはなぜか。これまで使い続けられてきた多くの言葉が、その歴史と共に古さを含蓄してしまっている気がする。これが言霊となり、強い存在となり、主張してくる。その言語性を超え、何か新たなものが生まれるとき、古い言葉を超える新たな言語が生まれるのだが、この「じゃない方検索」でもハッとする言葉に出会えるのはワクワクする感覚をもたらしてくれる。それはあたかも、ふたつの相まみえないであろう言葉を敢えて組み合わせて新しい概念を生み出すようなことに近い。コピーライターが用いそうな、異種の言葉の組み合わせで新しい感覚を生み出すという取り組みに近く、言葉が持つ世界感を超えるタイムマシンとも言えるかも知れない。
このサイトが貢献しようとするNPOの話に戻ると、やはり各所が悩む、新たな支援者との繋がりはこれまでのやり方ではなかなか苦境を打破できないと思う。現世界では、資本主義の下、儲かるか儲からないかの指標が長らく続いた。NPOも同様で、儲かるということではないが、資金を集め、成果を示すことが求められたはずだ。しかしこれからはその指標も変わっていくはず。これからのバーチャル世界とリアルの混在する中で、リアル世界である種の決めつけ、バイアスがかかっていたこれらNPOに対してもそのイメージを一新する機会が多々あるはずだ。これまでの物理的世界では、例えば年齢や見かけなどでアンコンシャスなバイアスが生じる。そういった物理的な要素が排除されるバーチャル空間ではそれぞれが保有する能力だけがアピールされるため、その基準における純粋な評価が得られるはず。これを皮切りにインクルーシブ的な動きもバーチャル空間では加速し、それが当たり前になる。これまでの思考の延長線上でアドバンテージを得られなかったマイノリティの方々も含めて、自分を発露し生きやすい場にもなるのではないだろうか。今はその世界ができていく前段階での地ならし的時期であり、NPOもこれからはその世界をよくするという意志が純粋に評価され、共感を拡げ、その存在だけで美しいと思われるのではないか。尺度の変わった中で、すべてのNPOの存在が是認されることになるはず。若い世代はバーチャル中心で活きてきた人も多く、物理的世界とは異なる目線が基軸となっていることもあり、彼らが消費者から物理的世界における生産者となったときにはさらに大きな変化が生じるだろう。儲けなきゃという指標がなくなれば、思想や行動に対するワクワク感、期待感が重要になる。豊かさ、ウェルビーイング、サステナブルといった指標が浮上し、重要指標となる。ここでそれらを標榜してきたNPOがきっちりプレゼンスを上げていくのは期待したいところだ。
最後に、ChatGPTは日本的な世界で特に活きる気がしている。家屋に重ねてイメージしてみると、西洋のそれはカッチリと外と中を区切る設計が基本だが、日本では縁側や土間といった外との境界が曖昧であり、シームレスな拡がりを採り入れる工夫がある。外的世界との境界の曖昧さをうまく採り入れ行き来することでその変化を楽しむ土壌があり、その感覚はChatGPTが提示する、自身の解の少し先にあるものを十分に理解するに役立つ気がするのだ。例えばこの「じゃない方検索」で提示される、自分が知り得なかったNPOの存在を知り、理解しようとするプロセスにも、そんなことを感じることができそうだ。物理的な空間では伝わりづらい領域を、精神世界で受け止めるというシチュエーションでは日本人には優位性があるはずで、その意味でもここで紡ぎ出される偶発性は体験するに値するし、またそんな機会をNPOの方々も「新たな出会い作る」チャンスとして捉えてみてはどうだろうか。
本LIONS GOOD
NEWS2023のコンテンツや提供される「じゃない方検索」体験では、先のChatGPTの活用を通じて、自分が見えなかった、もしくは言語化できなかった領域にアクセスできるようになり、想像力を超える「創動力」を手にすることができるのではないだろうか。これはこれまでのあらゆる「出会い」を再定義しうる体験と言えるだろう。